海よりも深くて波よりも透明
~穂風~

海外に来た初日にきちんと眠れた試しがないのに、夏葉と寝たら自分でも信じられないくらい安心してすぐに眠ることができた。



夏葉は最強の安眠剤かもしれない…。



だから2日目の夜も誘ったのに断固拒否されてしまった。



俺は寝れないとか言われて悲しい…。



下半身の事情らしいけど。



大変そうだなー、なんて人ごと。



生理中じゃなきゃしてもいいんだけどね。



でも、「してもいい」ってだけで、自分からしたいって感覚はまだわからない。



経験がないからかもしれないけど。



夏葉もそれが分かってるから我慢してくれてるんだと思う。



本当にたまらなく好き…。



大切にされてるなあ、あたし。



だけど、仕方なく一人で眠った二日目の夜はやっぱりあんまりちゃんと寝れなかった。



一緒に寝るのは拒否られるので、今晩は電話しながら眠ることに。



今日は一日中海に入ってたから、疲れてすぐ眠れるとは思うけどね。



夏葉をそばに感じて寝たいだけ。



ただの口実だもーん。



布団に入って、夏葉と他愛ない会話。



耳元に電話越しの夏葉の声。



やっぱり安心する…。



好き~…。



電話をしたまま、どちらからともなく眠ってしまった。



起きたら10時。



今日はよく寝れた…。



スマホを見てみたら、2時間前に電話が切られた形跡があった。



朝までずっと通話繋がってたんだ…。



変な寝言とか言ってたらどうしよう!?



『おはよ』



夏葉にメッセージを送った。



『はよ』



すぐに返ってくる。



『あたしなんか変な寝言とか言ってなかった?』

『「夏葉チューして」って言ってたぞ』

『うそっ』

『うそ』



嘘かーい…。



まあどっちでもいいけど。
< 93 / 328 >

この作品をシェア

pagetop