海よりも深くて波よりも透明
『今日、90分後にホテルの前集合でいい?』

『了解』



スマホを閉じた。



今日は一日オフ。



身体を休めることも大切だからね。



予定のない今日は、夏葉と一緒にノースショアに行くんだ。



ノースショアにはあたしのもう一つの家がある。



ママとパパが入れ替わりに住んでて、今はママがノースショアにいる。



ノースショアはサーフィンの聖地だ。



ノースショアの波は場所によってはかなり厳しくて、素人が入ったら危険なくらい。



ここからは車で50分くらいで行ける。



顔を洗って、軽く化粧水で肌を整えてから着替えて準備した。



朝ご飯を食べてから、きっかり90分後にホテルの前へ。



すでに夏葉が車を借りてきてくれたらしく、ホテルの前で車に乗った夏葉が待ってた。



「ごめん、待った?」

「平気。早く乗れ~」

「ありがと」



いつも通り右側の助手席に乗り込んだ。



夏葉の助手席が大好きだ。



夏葉の横顔を見つめる。



右耳に見えるシルバーの小さいピアスがなんだかセクシー。



「どうした?」

「んーん。好きだなって」

「そりゃどうも」



あ~、好き。



こんなに好きで、あたしは一体どうしたらいいの?



そのまましばらく車に乗ってた。



しばらくして着くノースショアの別荘。



敷地内のガレージに車を止めてから家に入った。



海に面した平屋の大きい家。



セキュリティがしっかりしてるのに開放感があって大好きな家だ。



夏葉は岩崎龍臣と川村そよ子のハワイの別荘に興奮してるみたいだけど。



「ママー?」



家に入って声をかけるがしんとしてる。



リビングにもいないし…。



今日来るって言っといたのにな。
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