海よりも深くて波よりも透明
しばらくそうしてたら落ち着いてきた。



身体を離して夏葉の顔を見た。



夏葉が優しい目であたしを見て、目もとの涙をぬぐった。



「ブサイク」

「うるさい…」



夏葉は笑ってあたしのおでこにキスした。



「落ち着いたか?」

「うん…」



もう一度あたしを抱きしめて夏葉が頭を撫でてくれた。



夏葉の匂いが広がる。



この広い胸が大好きだ。



それからご飯を食べて、ママを呼んで家を出た。



ママの高級車で雑貨屋さんに行く。



そこで夏葉が真剣な顔で食器を見てて。



夏葉って食器とか好きだよね。



食器というか、おしゃれで素敵な物が好きなんだよね。



いつもセンス良いもん。だから余計にかっこいい。



白い陶器の小皿を夏葉が買おうとしたらママが買ってあげてた。



なんだか微笑ましい。



それからお店を出て、ノースショアの波に乗りたいという夏葉のために、家にあるママの板を貸してあげて夏葉の波乗りを海岸から見ていた。



楽しそうに波乗りするなあ。



こういう風に夏葉の波乗りを見るのは新鮮だ。



プロではないものの、ノースショアの厳しい波も乗りこなしてて上手い。



サーフフォトグラファーは波乗りの技術も必要だから、これからもっともっとこの世界で活躍していくんだろうな。



一緒に成長していけたらいいな…。



ちょっとしてから夏葉が海からあがった。



「板めちゃくちゃ乗りやすいっす…。やばいわこれ…」



夏葉がママに言った。



「ありがと。あげよっか?」

「いやいやいや…。それはマジ意味わかんないっす」

「いいよ一本くらい。特別な板でもないし」

「いやいやさすがに払います…。川村そよ子の板タダでもらうのはやばい」



夏葉が慌ててる。



確かにママの板って高級品だもんね。
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