海よりも深くて波よりも透明

浜風の青春

~穂風~

夏休みが終わるまであと少し。



今日はあたしの誕生日だ。



ようやく18歳。



ちょっと大人に近づいたんじゃないかと思う。



大人な夏葉にあたしも追いつきたいもん…。



今は夏葉の部屋にいる。



夏葉はどこかお店を予約しようとしてくれてたけど、あたしが夏葉の部屋がいいと断った。



どこか行くよりここが落ち着くから。



夏葉と2人でいたいしね。



夏葉が作ってくれたほうれん草と鮭のクリームパスタをお昼に食べ終わり、夏葉がお皿を洗っているところを後ろから抱きしめて顔を背中につけた。



「何してんの」



夏葉が洗いながら言う。



「くっついてるのー」

「動きにくいわ」

「あとどのくらいで終わる?」

「もう終わる」



そう言って言葉通り水を止めた夏葉。



体ごと振り向いて、あたしの髪の毛にキスした。



それからあたしの腕をほどいて、デスクまで移動して、引き出しから何かを取り出す。



あたしは畳に腰を下ろした。



「ん、誕生日プレゼント」



そう言って夏葉がテーブルに小さい箱をコトンと置いた。



やばい、想像以上に嬉しいかも…。



好きな人があたしのために用意してくれたプレゼント…。



ドキドキする気持ちを抑え、箱をゆっくりと開けた。



うそ…。



入っていたのは、シルバーのピアス。



夏葉が右耳にしているのと同じやつだ…。



前に、穴は開けてないけど、夏葉と同じピアスが欲しいって言ったんだ。



そのときは、お揃いなんてガキくさいことはしないって一蹴されたのに…。



「いいの…?」

「ん、特別な」



夏葉はあたしを喜ばせる天才だ。



中毒性あるよ…。
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