薬師見習いの恋
「あ、いえ、その……」
 従僕はちらりとアシュトンを見る。殺さんばかりの勢いで睨まれ、黙り込む。

「教えてくれないのであれば、もうこちらには薬を渡しません」
「そんな!」
「卑怯だぞ!」
 従僕とアシュトンが叫ぶ。

「卑怯でけっこう。マリーはどこにいるのです!?」
「わ、わかりません」
 従僕の答えにアシュトンはほっとした様子を見せた。

「フロラン様と一緒に地下室を出てから、どこへ行かれたのかはわかりません」
「なんだと!?」
 続いた従僕の言葉にアシュトンは叫ぶ。

「地下室とは、どういうことですか」
 ロニーはアシュトンを睨む。

「まさか、薬草を採りに……」
 アシュトンの言葉にロニーはハッとした。

「ああ、まったく!」
 走り出そうとした彼は、
「ロニー」
 この場にいるはずのない人の声に足を止めた。

< 106 / 162 >

この作品をシェア

pagetop