薬師見習いの恋
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ロニーはすぐにその印に気がついた。
いつかマリーベルが言っていた、迷子にならないための方法だ。彼女は猟師の父から教わったと言っていた。
折られた木の枝を手掛かりに歩く。月露草への道しるべだろう。
とにかく追いつかなくては。
ロニーは急ぎ足で進む。
やがてせせらぎの音が聞こえ、木々の隙間に人影が見えた。そちらはなぜかうっすらと明るく見える。
近付くにつれ、明かりの正体に気がついた。
遠目にも、花が淡く輝いているのが見えた。
あれが月露草か。
咲いているのを見るのは初めてだった。手に入るのはいつも、干して乾燥させたものばかりだったから。
人影はこちらに背を向けていて、まだロニーには気づいていない。
人影が立ち上がり、ひとりがふらついて倒れた。もうひとりが助け起こそうとしている。
ロニーは急いで近づく。
息をきらしてふたりの前に立つと、ふたりは驚いたように顔をあげた。
「ロニー……」
マリーベルが呆然とつぶやく。
「心配しました。どうして勝手に来たのですか」
「だって……」
「彼女は悪くない。俺が脅したんだ」
「違うわ」
「……話はあとにしましょう。薬草を採取したのですね。早く帰って調合を」
言いかけたロニーはマリーベルの異変に気がつく。夜目にも顔が赤く、走ってもいないのに息が上がっている様子だ。