薬師見習いの恋
 ロニーははっと思い出す。
 小さな串であっても脳に刺されば死に至ることがある。

 外側は頭蓋骨に守られているが、内側なら。
 ロニーは残り僅かとなった矢をつがえて魔獣の前にまわり、慎重に狙いを定める。

「ぶぎい!」
 叫んだ瞬間に、ロニーはその口へと矢を放つ。

 口腔に刺さり、魔獣は新たな痛みにさらに暴れる。
 ぶちっと縄が切れ、魔獣は走り出した。
 その先にはマリーベルがいる。

「マリー!」
 マリーベルは体を転がして寸前で魔獣を避け、魔獣は正面に立つ巨木に激突し、倒れた。

 魔獣はぴくぴくと痙攣するように動いていたが、やがてその動きをとめて、足がばたりと力なく落ちた。

「マリー! 大丈夫か!」
「大丈夫……」
 マリーベルはよろよろと身を起こした。

「あいつは……」
「確認しにいく。ここで待て」
 フロランが言い、魔獣に近寄る。

 腹は動いておらず、呼吸を停止しているように見えた。
 その足に剣を差し、魔獣に反応がないことを確認し、魔獣の頭の側に向かう。その首に剣を突き立て、とどめを刺した。
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