薬師見習いの恋
「まだ寝てる?」
 どう返事をしていいのかわからず、動くこともできなかった。

 そっと髪を撫でられ、マリーベルはどきっとする。ロニーが撫でているのに違いなく、その優しい感触はとても心地いい。
 今さら起きてますとも言えず、彼女は目をつぶったままどきどきと撫でられるままでいた。

 やがて彼は部屋を出て行き、マリーベルは大きく息を吐いた。
 どうして彼が。

 いや、心配して見に来てくれたのだろう。
 だけど、頭を撫でられるなんて。

 子ども扱いのような気がしなくもないが、やはりどきどきしてしまう。
 マリーベルは布団を深くかぶり、なんどもロニーの手の優しさを思い出した。



 ドアがノックされて、マリーベルはがばっと起き上がった。
 いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
 またロニーが来てくれたのだろうか。

「マリー、起きた?」
 レターナの声がしてドアが開く。
 ロニーじゃなかった、とマリーベルは少なからず落胆した。
 レターナは感染対策として顔の下半分を布で覆っていた。

「心配したわ。あなた、三日も眠りっぱなしだったのよ」
「そんなに?」
 なんどか夢うつつに起きた記憶はあるが、そんなに時間が経っているとは思いもしなかった。
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