薬師見習いの恋
「薬は? エンギア熱はどうなったの?」
「ロニーが新しい薬を配ってくれたから大丈夫よ。みんな症状が落ち着きつつあるみたい」
「よかった……」
 マリーはほっと息をついた。

「勝手に森に入って……言いたいことはたくさんあるけど、体を治すのが先決ね。スープを持って来たから飲みなさい」
「はい」
 マリーベルは素直に返事をして、母の作った温かいスープを飲んだ。



 朝食を終えたマリーベルは身支度を整えた。
 もう熱は下がっているし、エンギア熱は熱が下がればもう人には感染させないと言われている。

 ロニーの家に着くと、母から聞いた通りに家の隣には天幕が張られ、多くの兵士が出入りしていた。医療を担当する衛生兵で軍属の医師も薬師もいるという。
 扉をノックすると、ドアを開けて出迎えてくれたのは初めて見る兵士だった。

「なに用か」
「薬師見習いのマリーベルです。ロニーはいますか?」
「いますよ。どうぞ」
 マリーベルはぺこりと頭を下げて中に入る。
 ロニーは乳鉢で薬を調合していて、マリーベルを見ると驚いたように手を止める。

「もう起きて大丈夫ですか?」
「大丈夫。ふらつきもないわ」
 マリーベルはにっこりと笑って見せた。
< 134 / 162 >

この作品をシェア

pagetop