薬師見習いの恋
「様子を見に行ったらまだ寝てましたから……大大丈夫ならよかったです」
 やっぱりうちに来てたんだ。
 マリーベルは赤くなりそうな顔を窓の外に向ける。

「兵隊さんがたくさん来てるのね」
「薬の製造を手伝ってもらってる。軍属の薬師も来てくれた。月露草のおかげでみんな回復に向かってるよ。誰も死なずにすみそうだ」
「本当に!? 良かった!」
 マリーベルは大きく息をはいてからロニーを見た。

「ロニー、これからも村にいてもらえない? 私ではダメだから……」
「どうしてそう思うのですか?」

「私はしょせん偽物だと思い知ったわ。なにもできなくて、ぜんぜんダメだった。こんな私が薬師を名乗るなんて、許されないと思う」
「あれほど頑張っていたじゃないですか」

「頑張るだけじゃダメだもの」
「いいえ、あなたが頑張ったからみなの命が助かったのです。誰がなんと言おうと、あなたは立派な薬師です」

 ロニーは微笑してマリーベルを見る。
 見つめ返した彼女は、その顔が赤いことに気が付いた。

「そんなあなただから私は……」
 言いかけたロニーはふらっとしてテーブルに手をついた。

「……ちょっとごめんね」
 まさか、と思いながらマリーベルはロニーの額に手を当てる。
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