薬師見習いの恋
「すごい熱!」
「そんなはずは……私はレミュールにいたときに一度かかっているし、大丈夫なはずです」

「もう! 免疫があっても完璧じゃないのはロニーが言ってたんじゃない! みなさん、ここは今から閉鎖して消毒します!」
「それでは薬が」

「外の天幕でも作ってるんでしょ。大丈夫、今度は私も作るから」
 断言するマリーベルに、ロニーは微笑を浮かべた。

「ずいぶん頼もしくなりましたね。やはりもう立派な薬師ですよ」
 つぶやいて、ロニーはずるずると床に座り込む。

「ロニー!」
「大丈夫ですから」
 答える彼の声は弱々しい。
「ロニー氏はずっとあなたの心配をしていました。無事な姿を見て緊張の糸が切れたのでしょう」

 兵士の声に、マリーベルは顔を上げる。
 ロニーがそんなに心配してくれたのが申し訳ないと同時に、嬉しくもあった。

「彼をベッドに運んでくださいますか」
「はい」
 兵士はふたりがかりでロニーをベッドに運び、寝かせる。
 部屋に戻ったマリーベルは、居並ぶ衛生兵の前で背筋を伸ばした。

「薬の処方は私が続けます。お手伝いいただけますか?」
「もちろんです」
 年かさの衛生兵が代表して答える。
 マリーベルはひきつりそうな顔に笑顔を浮かべた。
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