薬師見習いの恋
 最初に病気を発症した医師は、治癒後は患者の診察に協力してくれた。
 村の人々には笑顔が戻りつつあり、マリーベルは安堵と同時にこの先のことを考えていた。

 病気がおさまれば、今度こそロニーは出て行くだろう。
 寂しいけれど、それは仕方のないことだ。
 マリーべルは覚悟が決まっている自分に驚きつつ、微笑を浮かべた。

 レミュールに勉強に行く話は宙ぶらりんになっているが、きちんと断ろうと思っていた。
 アシュトンはハンナの専属になる前提で話していたから、この村の薬師として仕事をしていきたいのなら、やはり断らざるを得ない。

 レミュールは無理でも、どこかで勉強を続けたい。
 隣町で薬師を募集していないだろうか。そこで薬師として働きながら勉強を続け、やがてはこの村に戻って来る、そんな未来を考え始めていた。

 王女が村を滅ぼそうとしている疑義もまた曖昧なままだった。ルタンたちはいまだに疑って村長のゼロムに相談しているようだが、今のところはなにも行動はしていない。

 アシュトンはあれ以来反省したようで、エルベラータとともに村のために尽力している。このまま鎮静化するだろうとマリーベルは楽観していた。

 ロニーの家で彼と合流すると、一緒にアシュトンの屋敷に向かう。
 ロニーがエンギア熱から回復したあとは、ルスティカ家でのエンギア熱対策会議にロニーもマリーベルも参加していた。

 エルベラータもアシュトンも軍医も参加している。フロランとモリスは護衛としてそばに侍るが、会議ではなにも発言しない。
 最近は終息宣言をいつ出すのかという話が出ていた。
 今日もその話題が出ることだろう。
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