薬師見習いの恋
 リビングに案内されるとすでにエルベラータと軍医、アシュトンが揃っていた。
「お待たせしました」
 ロニーが言い、マリーベルはロニーと一緒に頭を下げる。

「いや、定刻だ。始めようか」
 エルベラータがふたりに座るように促し、会議を始める。
 軍医が昨日の発病者が一名であったことを報告し、発症中の患者もすべて回復傾向にあることを告げる。

「……という状況ですので、終息宣言を出しても問題はないかと思います」
「私は同意だが、みなはどうだ」

「異議ありません」
「同じく」
「私も異議ありません」
 エルベラータの問いかけに、ロニー、アシュトン、マリーベルが答える。

「ではそのように発表し、レミュールにも報告する。軍の撤退は順次、森の対応については……」
 言いかけたエルベラータは外から聞こえる声に言葉を切った。
 軍医がさっと立ち上がり窓の外を見る。

「村人が多数押し寄せて、なにか叫んでいます。武器は持っていないようですが」
 軍医が窓を開けると怒声が部屋にまで届いた。

「王女を出せ!」
「森を開放しろ!」
「薬草はみんなのものだ!」

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