薬師見習いの恋
「これからが大変だ。建設のために人が来て需要が高まれば物資の値段が上がる。高騰しないように値段を監視して物流を統制しなくてはならない。急な人員の流入は治安の混乱を招く。治安維持のために軍を派遣するとそのことに反発する人もいる。課題は山積みだ」
「よくわからないけど、大変そうですね」
 マリーベルの同情に、エルベラータは苦笑する。

「この国を平和かつ幸福に導くための権力だからな。仕事が大変なのは仕方ない」
「そうなんですね。私は学がないからよくわからなくて」

「マリー、レミュールに来ないか? 奨学金制度もある。身分に関係なく優秀な者は学費を返さなくてもいい特待生制度もある」
「そんな制度があるんですか!?」
 マリーベルは驚きに声を上げた。

「私がレミュールにいたころはありませんでしたね」
「私も初耳です」
 ロニーもアシュトンも驚いている。

「昨年作って、今年から運用を始めている。特別扱いはできないが、試験を受けるための推薦なら私にもできる」
 自分が王都レミュールで勉強できる、そんな夢みたいなことがあるだろうか。

「それとも、薬学の学校をこちらに作るから、その一期生になるか? 奨学金制度ももちろん作る」
「私が学校に……」

「年齢制限はしないつもりだ。その気になればいつでも受験してくれ」
「はい!」
 マリーベルの上気した頬を見て、エルベラータは微笑する。
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