薬師見習いの恋
「今回こちらに来て、まだまだ手が届いていない地域があることがよくわかった。礼を言う」
「わ、私はなにもしてなくて」

「いや、よく頑張ってくれた。今日も一番に私をかばってくれた。君のような人がいるから、私は頑張れるのだと思う」
 そんなことを言われても、マリーベルは戸惑ってしまう。

「私なんて……」
「素直に受け取っておけばいいんだよ」
 ロニーに後ろから両肩に手を置かれ、マリーベルはどぎまぎしながらエルベラータに頭を下げた。

「ありがとうございます」
 エルベラータはまた微笑し、それから言った。

「私は明日には引き上げる。アシュトン、世話になったな」
「いいえ、殿下に置かれましては弊宅(へいたく)にご滞在いただきき、ありがたく存じます」

「薬学院を建てるときにはまた世話になる。頼むぞ」
「かしこまりました」
 アシュトンは慇懃に礼をした。



 その後は会議の続きをして終了し、お昼前にはマリーベルとロニーは屋敷を出た。
「お弁当もらっちゃった」
 マリーベルは屋敷のメイドからもらった包みを手に笑顔でロニーに言う。

「良かったですね」
「ロニーの分もあるよ」

「では……よかったら森に行きませんか」
「森に?」
「月露草の確認もしたいですし、話したいことがありますから」
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