薬師見習いの恋
 気負ったマリーベルの表情に、ロニーは微笑を見せる。
「春になったら学院の建設が本格的に始動します。そのときには私はまたこの村に来ます」
「どうして?」
 マリーベルは目を丸くしたが、声には喜びが滲んでいた。

「薬学院の副学院長として就任することが決まったんですよ。学院の建設から関わることにもなりましたから、こちらに滞在させてもらいます」
「副学院長!?」

「愛しいあなたにまた会いに来られるのがうれしいです」
 マリーベルは耳を疑った。
 目をぱちくりさせていると、ロニーはふふっと笑みを零す。

「この村を離れたくなかった一番の理由はあなたです」
 マリーベルの顔は一瞬で赤くなった。

「……不肖の弟子が心配で?」
「違います。あなたの笑顔を見られなくなると思うと、ここを離れることができませんでした」
 ロニーは苦笑し、マリーベルの目をまっすぐに見た。

「マリー、私はあなたが好きです」
「嘘……」
「本当ですよ」

 ロニーの声は優しく、愛し気に耳に響く。
 だが、マリーベルはにわかには信じられない。

「ロニーはエルバ様のことが好きだったんじゃ?」
「どうしてそんなふうに思うのですか?」
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