薬師見習いの恋
 聞かれて、マリーベルは言葉につまる。
 そう思ったきっかけは、ふたりの会話を意図せず盗み聞いてしまったことが原因だから。

「えっと……エルバ様が、ロニーのことを必要だって言ってたから……」
 マリーベルはどきどきしながら言った。
 これでごまかしがきくだろうか。

「必要なのは薬師としての私であって、私個人ではないですよ。新しく作る学校の講師になってほしいというだけですから」
 気づいているのかいないのか、ロニーは苦笑して答える。

「そう……ね、確かに、愛してるとか、そういう言葉じゃなかったわ」
 お気持ちに沿いたい気持ちはあります、というのはつまり、講師をしたい気持ちもあるけれど、という意味だったのだ。

「誤解は解けた?」
「……たぶん」
 マリーベルはうつむく。今の自分は耳まで真っ赤になっているに違いないと思いながら。

「たぶん、じゃ弱いですね。どうしたらわかってもらえるのでしょう?」
「どうしたらって……」

「……これはまだ内密の話なのですが、エルベラータ様は王都に婚約者がいらっしゃいますよ。だから私とどうにかなるなんてことは絶対にありません」
「そうなの?」

「私はそんなに信用ないですか?」
 苦笑するロニーに、マリーベルは慌てる。
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