薬師見習いの恋
「仕事をやめさせてほしいの」
「どうして?」
 ロニーは驚いて彼女を見る。
 マリーベルはもじもじとお腹に手をあて、頬をあからめて上目遣いにロニーを見た。

「……赤ちゃんができたの」
「本当に!?」
 驚くロニーに、マリーベルははにかみながら頷く。

「昨日お医者様にも行ってきて、おめでとうって言ってもらえたの」
「マリー!」
 ロニーは感極まったように名を呼び、彼女の手を握る。

「嬉しい、きっとマリーに似たかわいい女の子だ」
「あなたに似た男の子かもしれないわ」
「どっちでもいい、きっとかわいい子が生まれる」
 ロニーはぎゅっと抱きしめようとしてはっと我に返り、そうっと壊れ物を扱うようにマリーベルを抱きしめた。

「やだわ、気を使い過ぎ」
 くすくすとマリーベルが笑うと、ロニーは照れたように微笑した。

「あなたも子どももとても大切だから」
「うれしい」
 マリーベルはロニーにもたれかかり、ロニーはその頭をそっと抱え込む。

「どんな名前がいいかな」
「いい名前にしようね」
「ああ……幸せだ」
 ロニーはマリーベルの髪にキスを落とし、額にキスをして、彼女の顎を持ち上げる。

 マリーベルはロニーの目を見つめてからゆっくりと目を閉じる。
 ロニーの唇が優しく彼女に触れて、肩に置いた手がぎゅっとマリーベルを抱き寄せる。

 春のあたたかな風がそよぎ、咲き乱れたブルーベルが祝福の鐘を鳴らすように揺れていた。





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