薬師見習いの恋
「マリー、早かったですね……エルベラータ様!?」
 ロニーはマリーベルの連れている女性を見て驚きの声を上げた。

「やはりロニーか! 探したぞ」
 エルベラータの声は歓喜に満ちていて、マリーベルは絶望にうつむく。

「どうしてエルベラータ様が……」
「様はやめろ。入るぞ」
 彼女はするりと家の中に入り、珍しそうに室内をきょろきょろと眺める。

「すみません、今日は帰っていただいていいですか?」
 ロニーに申し訳なさそうに言われ、マリーベルは頷く。

「これ……今日とれた分です」
「いつもありがとうございます」
 かごを差し出すと、ロニーはいたわるように微笑した。それからふたりの男性に声をかける。

「おふたりもどうぞ中へ」
 ふたりは軽く頭を下げて中に入る。

「マリー、またね」
 気遣うように声をかけ、ロニーは扉を閉める。
 目の前で閉じられた扉に、マリーは希望を閉ざされたかのようにうつむいた。



 ロニーの家に美女が来たことはまたたく間に村中に知れ渡った。
 だから家に着く頃には両親もそれを知っていた。マリーが案内してきたことも。

「ただいま」
「おかえり」
 母はなぜかいつも以上ににこにこしているように見えた。
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