薬師見習いの恋
「ありがとう!」
 鏡を見て、マリーベルは自分で見惚れそうになる。こんなに素敵になった自分を見るのは初めてだ。

 裁縫の上手いリリアンは村の中でとびきりの服を縫ってみんなの羨望を集めている。縫い目が揃っていて、デザインも上手で、ルスティカの奥様であるハンナにレミュールのお針子にも引けをとらないと言われたほどだ。

「さあ、行ってらっしゃい!」
「どんな感想をもらったか教えてね!」
「うまくやるのよ!」
「負けちゃだめよ!」
「ありがとう!」
 かけられた応援に、マリーベルは元気に答える。

 昨夜はどんよりと沈んでいたのに、みんなにもらった元気のおかげで気持ちは明るい。
 タニアの家を出ると、まっすぐにロニーの家に向かった。
 緊張とともに期待に胸を膨らませ、ドアをノックする。

「ロニー、マリーベルよ」
「開いてますよ」
 帰って来た答えにドアを開けると、ロニーとともにふたりの男性がいてぎょっとした。

 そうだ、この人たちもいたんだ。
 エルベラータが頭を占めていたので、フロランとモリスをすっかり忘れていた。
 ふたりはじろりとマリーベルを見て、すぐに興味なさげに目を逸らす。
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