薬師見習いの恋
 この村では生ごみの処理と食肉の確保のために豚を飼っている。生ごみは養豚場に持って行くのが常だった。

「おはよう、タニア!」
 マリーベルは養豚場で会った幼馴染に声をかける。タニアは茶色の髪に茶色の瞳をしていて、そばかすがキュートだ。
 近くには放し飼いの鶏がいて、地面をつついている。

「おはようマリー。この前教えてくれたローズマリーのトリートメント、すごいよかった。髪がつやつやになったわ。ルタンも褒めてくれたの」

 ルタンはタニアの恋人で、彼女とマリーベルの幼馴染でもある。小さな村なので同年の若者はみんな幼馴染で村内のものはほとんどみんな顔見知りだ。

 タニアが長い茶色の髪を手で流すと、髪はするりとした指通りを見せた。
 髪がぱさついて困っていると相談されて、ローズマリーのトリートメントエキスの作り方を教えたのだ。

 お湯が沸騰した鍋にローズマリーを入れて蓋をする。三十分ほど蒸らし、抽出されたエキスがトリートメントになるのだ。

 若返りのハーブとも言われているローズマリーは常緑の便利で手軽なハーブだが、地植えをすると木質化して二メートルほどの大きさになることもある。

「良かったわ」
 マリーベルはにっこりと笑う。

「マリーは今日もロニーのとこ?」
「そう!」

「ほんとにロニーが好きよね」
 からかう声に、マリーは頬を赤く染める。
< 4 / 162 >

この作品をシェア

pagetop