薬師見習いの恋
「お騒がせするつもりはなかったが、申しわけない。ここには個人的に来ているので、そういうことで頼む」
「かしこまりました。でしたらエルベラータ様とお呼びさせていただきます。我が息子はきちんとお迎えできましたでしょうか」
 ハンナは貴婦人らしい上品な笑みで応じた。

「それはもちろん。賢そうな方だ。よい跡取りとおなりでしょう」
「ありがとうございます。あとは良い縁があれば良いのですが」
「お母様!」
 アシュトンが咎めるように言うと、ハンナは肩をすくめた。

「まだまだ子供で困ります。結婚したくないなどと言って」
「それは私もわかるな。結婚で縛られるのは困る。おかげで父上にも母上にも怒られてばかりだ。二十三にもなって結婚していないのはお前くらいだぞ、ってね」

「まあ、エルベラータ様も」
 ほほ、とハンナが笑う。

「エルベラータ様はどうしてこちらに?」
「人を探していたんだ。こちらでは略称のままロニーと名乗っているようだが」

「薬師のロニーですね。大変お世話になっています。エルベラータ様もお薬をお求めで?」
「いや、私はロニー自身が必要でね」

「まあ!」
 ハンナは思わず手で口を押える。彼女は色っぽい意味で捉えたようだが、エルベラータはそれに気がつかない。
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