薬師見習いの恋
5 閉じ込める



 村の中は閑散としていて、マリーベルは顔をしかめた。
 いつもは村人が行き交い、活気が溢れている。

 今日はときおり兵士を見かけるだけで、しんと静かだ。
 ルスティカ家に着いてドアノッカーを叩くと、メイドが彼女を招き入れた。

「マリー、お薬をありがとう。屋敷でもたくさんの人が寝込んで大変なの。王女様のおつきのモリスって人も発病したのよ」
 マリーベルは胸を押さえた。一緒に昼食を食べたときの彼のほがらかな笑みが思い出される。こんな辺境で彼が病に倒れたと知ったら、王都に残る家族はどんなに心が痛いだろう。

「ロニーが帰って来たから、きっと大丈夫」
 マリーベルの言葉に、メイドは疲れた笑みを浮かべた。

「そうだといいんだけど。……マリーが来たらアシュトン様をお呼びするように言われいてるの。応接室へ案内するわ」
「わかったわ」
 アシュトンはモリスとともに対策本部で指揮をとっていた。話があるならエンギア熱のことだろう。

 メイドに薬を渡し、応接室で落ち着かない気持ちで待っているとアシュトンが入ってきた。続いてルタンとサミエルも入ってくる。彼らは今でもアシュトンと仲がいい。

「マリー、無事でよかった」
 アシュトンはほっとしたように言う。

「最初に感染した医者はまだ寝込んでいるし、モリス殿も寝込んでいる。君までなにかあったらと心配していたんだ」
「ありがとう、アシュトン様も……ルタンもサミエルも無事で良かった。でもどうしてここに?」
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