薬師見習いの恋
「大丈夫、前にも無事に帰って来られたし」
「今度は無事じゃないかもしれないじゃないか」

「今は薬草が必要なんだから」
「ダメだ、誰か!」
 アシュトンが声を上げると従僕が慌てて応接室に入ってきた。

「彼女を地下室へ閉じ込めておけ」
「え?」
 従僕は戸惑った。
 彼もマリーベルのことは知っている。アシュトンとは仲が良かったはずだ。なのに閉じ込めるなんて、戸惑わないわけがない。

「早くしろ!」
「はい!」
 彼は主人であるアシュトンに逆らうことはできなかった。

「やめて!」
 マリーべルは逃げようとするが従僕に捕まり、両手を後ろに回して動きを封じられてしまった。

「大人しくしてください。傷つけたくはありません」
 従僕に言われ、マリーベルは抵抗をやめた。力では男性にはかなわない。

「マリー、いくら薬草のためでも森に行くなんて許さない」
 アシュトンの言葉に、マリーベルは悔しく彼を見る。
 そのまま地下室に連れていかれ、閉じ込められた。

「どうしよう……」
 マリーベルは絶望とともに呟いた。
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