薬師見習いの恋
 しばらくしてランタンとマントを抱えて出てきてマントをマリーベルにかけた。
 村の中はすんなりと通ることができた。

 問題は、兵に囲まれている中を、村の外に出られるかどうかだ。
 マントを目深にかぶり、マリーベルは緊張で震える足を叱咤してフロランに続く。
 森へと続く道、村の出口でふたりの兵士に止められた。

「この村から出ることは禁止されているぞ」
「私は王女殿下の護衛のフロランだ。殿下の御命令でこの女を連行している」
 フロランは平然と答える。

「こんな時間にか?」
 兵の声は疑わしそうに松明をかかげ、フロランの顔を確認する。

「確かにフロラン殿だ。しかしその女は……」
「おい、野暮なこと言うなって」
 もうひとりがにやにやと笑いながら言う。

「フロラン殿も男だ、そういうことだろう?」
「まあ、な。殿下には内緒なんだ」
 え、とマリーベルは戸惑う。これではまるで自分と彼が男女の仲であり、密会のために外に出ようとしているかのように誤解されてしまう。

「あの……」
「あなたは黙っていてくれ」
 フロランに言われ、マリーベルは口をつぐんだ。
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