彼がモデルになったら
「そんな機会なかなかないじゃん」

また、なんでカメラマンの肩を持つのか分からないけど、私は言ってしまった。

「彼女さん、ありがとうございます。ほんと小さく掲載ですし、もちろん本名じゃなくてニックネームとかですから」

「あ、彼女じゃないです」

蒼は、はっきり否定した。

「写真だけなら……」

あんまり乗り気じゃなさそうだったけど、私が余計なことを言ったせいか、蒼は引き受けた。

簡単なアンケート用紙を蒼は記入してた。


蒼はニコリともせず、ただ立ち尽くして写真を撮られてた。




「ありがとうございます。再来月号に掲載されると思います」

そう言いながら、仕事が終わってほっとした様子でカメラマンは帰っていった。




「きっと、蒼がいいよって言わなかったら、あの人ずっと雑誌に載せる人探して大変だったんだろうね」

「だね」

蒼と目があった。私はすぐにそらした。




なんか蒼が遠く感じた。

蒼はそういう業界の人に目に留まるような容姿なんだ。

私はそんな人から声かけられるなんてない。

私のことを好きだと言ってた告白も、断ったことも全部夢だったんじゃないか?と思った。


人混みでめっちゃ美人でスタイルが良い人が歩いてて、蒼の隣に偶然並ぶと、ああしっくりくるな。と思う。

ショーウインドに映る私と蒼の姿はやっぱりちぐはぐだ。

バランスが悪い。

決して細くない、手足も長くない私。

やっぱり現実的に考えて釣り合わない。



なんで私に告白なんかしてきたんだろう。


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