彼がモデルになったら
蒼は人ごみをかき分け走って帰って来た。

「はぁはぁ…ちゃんと……説明………したから…大丈夫だと思う」

蒼は息を切らせて言った。


「うん」

蒼の顔を見ないように反対を向いた。



心に余裕がなくなってくる。



今年のバレンタインに蓮君にチョコ渡したかったのに。



――こんなの嫌だ蓮君――付き合ってた頃一緒にこの道歩いた――



あの時の私と
今の私は

何が違うんだろ?


同じ私なのに。


今の私は受け入れてもらえない。



涙は流したくないのに、とめどなく溢れてくる。


蒼は何も言わずただそばにいてくれた。




しばらくして、


「落ちついた?」

蒼が優しく言った。



「うん……」

私はハンカチで涙をぬぐいながら言った。


蒼の顔を見たら、唇の横から血が出てた。


「大丈夫?」

私はティッシュをバッグから取り出して、蒼の血を押さえた。

大きめな口、唇も腫れたようにふっくらとしている。

顎がシャープなせいか、より痛々しく感じた。





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