彼がモデルになったら
「あ、興味ないです」

蒼はないないと手を振った。

「ぜひ、お話だけでも」

引き下がらない男の人は、名刺を蒼に差し出す。

慣れた様子で、蒼は断った。



「すごいね、スカウトなんて」

「俺は興味あんまないし。服は好きだけど、モデルはちょっと恥ずかしいでしょ」

蒼は俯きがちに言った。


「よく、こういうことあるの?」


「あるかな……原宿渋谷で……」



すごい!考えてみたら、通り過ぎる女の子から羨ましいというような視線も感じる。

モヤシだとばかり思っていた蒼は、実はモデル体型だったんだ。

スカウトされるほど。

けど、本人にその気がなかったら、ただうっとうしいだけか。



「普通が一番でしょ」

蒼は笑って言った。

横顔を一瞬だけチラッと見た。




ゆっくりと歩いて後ろ姿を見つめる。




確かに頭小さいし、八頭身ってやつだ。



足もこんなに長かったっけ?

背が伸びた?



私は毎日蒼の何を見ていたんだろう?





蓮君のことばっか追ってるから、あんまり覚えていないんだ。


普通の一般的な人より背が高いから、頭が出て見える。

人ごみでも目立つ。

芸能人とかにこういう人いそうだ。




「どした?」

蒼は立ち止まって振り返る。

学校では毎日何気なく見てたはずなのに、不思議だ。

いつもと違って見える。







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