先輩は、はちみつの香り


「報われない片想いなんて誰が幸せになんの」



今にも消えそうな、
弱い夏川先輩の声が聞こえてきて。



その瞬間、ギュッと心が痛くなった。



「.....................っ、ぅ、」



心が痛くて、苦しくて、何も答えられなくて。



涙が、ポロポロと溢れてきた瞬間。



さっきよりも、
甘いはちみつの香りが、強くなった。



だって、私はいま、肩だけじゃなくて、
────夏川先輩に抱きしめてられてるから。



でもそれは、嫌じゃなくって。



むしろ心地よくって、このままでいたいと思った。



だけど、それはいけないこと。



〝好きな人〟がいるのに、
夏川先輩に甘えるなんてズルいっ。



そう頭では分かっているのに.....................



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