先輩は、はちみつの香り
〝はちみつ王子〟って呼ばれてる、
夏川先輩は、私にはもったいない人で。
「〜っ、慣れてないから仕方ないです、」
「うん。そーいうとこもかわいい」
「〜っ、」
急にサラッと、
〝可愛い〟なんて言われると。
それに対応出来る、
スキルなんて持ち合わせていなくって。
何も出来ない私を察したように。
──────ギュッと。
突然包み込まれたのは、
紛れもなく、先輩の甘いはちみつの香り。
その瞬間、思い出したのは、
夏川先輩と2人で出かけた日のことで。
「先輩は、はちみつの香り、やっぱりしますね、」
ほぼ、無意識に言葉を、
出したことに気づいたころには時すでに遅し。