The previous night of the world revolution
…何が起こったのか。

俺が状況を理解するのに、しばしの時間を要した。

「…卑怯だな、お前。後ろから攻撃しかけるとは」

「へぇ。…よく反応出来たな」

俺のすぐ後ろに、ルキハがいた。

ルキハは、両手で剣を抜き、帝国騎士団三番隊隊長の剣を受けていた。

何が起きたのかというと、俺が騎士団長様と相対しているその後ろから、この三番隊隊長がいきなり斬りかかってきたのだ。

でもその刃が届く前に、ルキハが間に入ってそれを受けた。

…何でそんなことに?

「何をやってる。アドルファス」

騎士団長様が、諌めるように三番隊隊長に言った。

この人、名前アドルファスなのか。

「悪いな。あんまり良い試合するもんだから、割り込みたくなっちまった」

アドルファスと呼ばれた三番隊隊長は、剣を腰に収めた。

ルキハも剣を下ろし、俺に振り向いた。

「大丈夫か?ルシファー」

「はぁ、はい…。どうも」

勿論斬りかかって殺されることはないと分かっているが、ルキハが止めていてくれなければ、俺は卑怯返しされてあっさりやられていただろう。

いや、乱入されなかったとしても負けてたけど。

ルキハの顔を見て安心したのか、膝から力が抜けて倒れかけた俺を、ルキハが支えてくれた。

あぁ、腹いてぇ…。

と、そこに。

「この馬鹿!」

「あいたっ!」

すぱーん、と良い音を立てて、姉さんに殴られた。

何故殴られなければならないのかと、考えたところで思い出した。

…そういや俺、帝国騎士団長様に回し蹴りかましたんだっけ。

「剣を飛ばされたのに蹴りで突っ込んでいく馬鹿があるか!」

「だって、だって悔しいじゃないですか!」

あれであっさり負けたら、なんだ、この程度かと思われて終わりじゃないか!

それは俺のゴキブリ精神に反することだ。

「そう怒ってやるな、ルシェ。剣を飛ばされたからといって攻撃手段をなくした訳じゃない。油断した俺が悪かった」

と、学生ごときに膝をつかされたにも関わらず。騎士団長は淡々としていた。

さすがの貫禄である。

「いずれにしても、これでお前の実力は分かった。参考にさせてもらう」

「あ、はい…。あの、蹴って済みません」

済みませんで済む訳がない失態だが、やはり帝国騎士団長は気を悪くした様子はなかった。

「気にするな。俺もやり返したしな」

「…」

そうですね。まだ痛くて立ち上がれないです。俺。

「…それと、お前も」

「…はい?」

帝国騎士団長は、ルキハに向けて言った。

「アドルファスの一撃を受けるとは、お前もなかなかの逸材のようだ」

「…それは、どうも」

ルキハは軽く頭を下げた。

このときルキハが何を考えていたのか、俺はまだ知らない。

「…では。時間を取らせて悪かったな」

もう用は済んだとばかりに背を向ける帝国騎士団長を見送り、俺は思いっきり、安堵の溜め息をついた。
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