The previous night of the world revolution
「…腹、大丈夫か?」

「…うー…。全く、乙女の腹に剣をぶん投げるとは…」

「乙女じゃないだろ、お前は…」

いやね、自業自得ではあるけども。

先に蹴りを入れた俺が卑怯なのだけども。

これじゃ痛み分けどころか、俺だけが一方的にやられたみたいじゃないか。

卒業式だぞ今日。卒業式に腹に痣を作る学生が俺以外にいるか?

「それにしても、お前、さすがだな…。帝国騎士団長とまともに渡り合ってたじゃないか」

と、慰めようとしてくれたのか、ルキハが褒めてくれたが。

「完全に逃げ腰だったじゃないですか…」

ただ、持ち前のスピードを生かしてちょこまかしてたに過ぎない。

大体、剣を片方吹っ飛ばされたし。

不意打ちの蹴りだって、あの人、ほぼノーダメージだったじゃないか。

「並みの騎士なら、逃げ腰になる前に一撃で斬られてるよ」

「…そーですかね」

「実際、お前隊長になるだけの実力はあるんじゃないのか?」

「…それは…」

どうなんだろう。…姉にはそう言われたこともあるけど。

「いずれはなれるんじゃないですか?多分…。さすがに四月からいきなりはないと思いますけど…」

「どうかな。帝国騎士団は実力主義だろう?実力が伴ってるなら、四月から隊長やれと言われてもおかしくないと思うが」

「それはあなた、買い被り過ぎですって」

ルキハは優しいから、そう言ってくれてるだけだ。

俺はそう思っていた。







…その日、俺は帝国騎士官学校の校舎を永遠に後にした。

もうトラウマなんて克服したと思っていたのに、校門を出た瞬間、心がふっと軽くなった。

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