The previous night of the world revolution
実のところ、俺にはルシファーの家を訪れるような時間の余裕はあまりないのだ。

二年間、帝国騎士官学校に潜入した俺は、春からいよいよ帝国騎士団に入る。

学校にいた頃は、ほとんど『青薔薇連合会』とは連絡を取れなかった。あの学校は、徹底して外部から遮断されていたから。

それをようやく卒業し、本格的に帝国騎士団に入るまでのこの僅かな休暇期間は、溜まっていた報告事項を詳しく『青薔薇連合会』に伝える、貴重な時間だ。

勿論、警戒は緩めていない。常に帝国騎士団からは疑いの目で見られているという意識で動いている。

その上で…この度は、アシュトーリアさんに報告したいことがたくさんあるのだ。

特に…先日、俺は帝国騎士団の団長と見えた。

直接俺と話した訳ではないが…まだ騎士団にも入っていないのに、件の騎士団長をこの目で見ることが出来るとは。

しかもその実力も見ることが出来た。

それだけではない。騎士団長のみならず、他の四人の隊長達に会った。

こんな機会、そうそうあることではない。

ルシファーと付き合っていて、本当に良かった。

あいつの実力についても、知っていたつもりだったが…やはり、凄まじいものがあった。

二年前まで、空虚な目をしていたのが嘘のようだ。

…それにしても、あのとき…割って入ってしまったのは、失敗だった。

アドルファスとかいう、三番隊の隊長がルシファーの後ろから斬りかかったとき。

俺は咄嗟に、ルシファーを守ろうとしてしまった。

完全に無意識だった。帝国騎士団の人間がルシファーを本気で斬ろうとするはずがないというのに。

俺は帝国騎士官学校では、本来の実力を出さずにいた。

目立つ訳にはいかなかったからだ。

でも、俺はあのとき、三番隊隊長の一撃を受けてしまった。

並みの人間では、あの一撃を受けることは出来なかった。それを俺は…無意識に受け止めてしまったのだ。

あれは失敗だった。学校から帝国騎士団側に渡されたであろう推薦書には、俺はあんなことが出来るほどの実力はないと書かれていたはずだ。それなのに…みすみす疑われるようなことをしてしまった。

帝国騎士団の来訪目的はルシファーだったのだから、俺の方は眼中になかったと思いたいが。

…どうだろう。分からなかった。

とにかく、過ぎたことは過ぎたこととして…次を見据えるしかなかった。

そして今は、ルシファー宅への来訪だ。
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