The previous night of the world revolution
「ばっ…か。安全運転しろ」

咄嗟にリアウィンドウを振り返って、追突の危険がないことを確認する。

良かった。後続車がいなくて。追突されるところだった。

「…今、何て言った?」

「は…?」

アイズの声は、珍しく真剣そのものだった。

「帝国騎士団長に会ったって?」

「あ…あぁ、会った」

その話をしていたんだったな。

確かに重要なことではあるが、そんなに驚くとは思わなかった。

しかも、いつも飄々としてるアイズが…。

「何で?どうしてそんなことになったの。直接話したの?」

「ちょっと落ち着け。直接は話してない。あんまり」

「あんまりって何?顔覚えられたの?名前も?」

「落ち着けって。何でそんなに興奮してんだ」

「興奮もするよ。君。奴は謂わば、敵の総大将だよ?騎士団に入ってからならまだしも、まさか学生の身分で会うことになるとは。何の準備もせず」

準備って…。

「君の素性は確かに、『連合会』が細心の注意を払って隠してる。でも、確実とは言えないんだよ」

「それは分かってるが…」

「分かってないよ。どれだけ危険だと思ってるの」

…珍しく、アイズは怒っているらしかった。

何故怒る?

「やむを得ない状況だったんだとは思うけど…」

「あぁ…。まぁ、会うまでそれとは分からなかったしな」

いきなり呼び出されて、いきなりルシファーに付き添いを頼まれたんだから。

事前に分かっていれば、俺ももっと警戒したはずだ。

「…まぁ良い。良くないけど。ひとまず無事だったことを喜ぼう。…それで?一体何でそんな状況に?」

「あぁ。卒業式の後のことなんだが…」

「卒業式?…私がアリューシャと君の制服姿を眺めて楽しんでる間に、そんなことになってたんだ」

「は?お前ら何で見に来てんの?」

その日、俺は初めて卒業式にアイズ達が来ていたことを知った。

俺に何も知らせず、何故そんなことになっていたのか聞きたかったが、それを遮るようにアイズに詳細を詰問され…結局有耶無耶になった。
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