The previous night of the world revolution
帝国騎士団の官舎に集められた、若き帝国騎士団員の皆さん、一人一人に。

あなたは何処其処に配属されましたよ、という旨が書かれた文書を渡され。

俺に回ってきたそれには、あなたは帝国騎士団四番隊の隊長ですよ、とか書かれてて、俺は先程も言った通り、後ろに引っくり返って後頭部を打った。

「何をやってんだ、お前は…」

「ふぉぉぉ…」

あまりの痛みに我に返り、悶絶しているところをルキハに救われた。

彼はメシアだ。

ルキハが傍にいてくれなかったら、俺はきっとここで発狂して踊り出していたかもしれない。

入団早々、精神病院送りにされるところだった。

「おい、大丈夫か?頭は」

「…あい…」

よろよろと起き上がって、俺は改めて、現状を理解しようとした。

…今、書いてあったよね。紙に。

君、四番隊の隊長ね、って。

いや、もっと真面目な文章だったけど。

きっと見間違いだ見間違い。春とはいえ今日はちょっと暖かいから、俺の頭はお花畑が広がってるんだ。そうに違いない。

そう思って改めて、文書に目を向ける。読む。

…うん。やっぱり書いてあるわ。

あれ?俺の頭と目は大丈夫?

「る、る、ルキハさん?」

「何だ?」

怪しい子を見る目でこちらを見るルキハに、俺は自分の書類を差し出した。

「俺の代わりに現実を教えてください」

「はぁ…?」

何言ってるんだこのアホは、みたいな顔で。

ルキハは、俺の配属先書類をちらりと見た。

「…ほう。お前隊長になるのか」

「…」

「だから言っただろ。お前にはそれだけの実力が…」

「ルキハさんまで頭がおかしくなったんですね!一緒にお花畑なんだ!」

「あぁ…?」

なんてことだ。恨めしい春の陽気め。俺のみならず、ルキハの頭までお花畑にするとは。

だって、そんな。おかしい。

「なんだか現実を理解出来てないようだが、お前隊長だぞ」

「…」

「読み間違いでもお花畑でもない。おめでとう」

「…?」

読み間違いじゃ、ない。

お花畑でも、ない。

…なら考えられる可能性は一つだ。

「…騎士団の皆さん、お疲れでミスったんでしょう」

「…」

「ちょっとここ間違ってますよって、教えてきますね」

俺達が間違ってるんじゃないなら、間違ってるのは向こうだ。そうに違いない。

そう思って訂正を求めようと、係の人に書類を見せに行こうとしたら。

「いい加減認めろ!お前隊長なんだって」

ルキハは俺の肩をがしっ、と掴んだ。

「そんな!そんな馬鹿な」

「馬鹿じゃない。お前、あれだけ帝国騎士団長と良い勝負しておいて、何抜かしてんだ。いい加減現実を受け入れろ」

「…」

…本当に、この場にルキハがいてくれて良かった。

彼のお陰で、俺はようやく現実を受け入れ始めた。
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