The previous night of the world revolution
…何故こんなことになってしまったのだか。

考えただけで頭が痛いが。

行ってみたけど、実はやっぱり間違いでしたごめんね、とかいうオチであって欲しいと、まだ思っていた。

その可能性に賭けていた。

…しかし。

連れていかれた先は、王宮内の豪奢な会議室。そこには帝国騎士団九人の隊長達が、それぞれ席について俺を待っていた。

さながら気分は、処刑台に上がらされる罪人のそれである。

想像して欲しい。入社初日に、他の新入社員から引き離され、一人だけよそに連れていかれて、着いた先には会社の重役達が勢揃いし、難しい顔で待ち構えている。

悪夢だ。

俺が何をしたって言うんですか。

新入社員に対してこの扱い。とんでもないブラック企業だ。

本音を言えば今すぐ背を向けて全力逃走したかったが、それをしなかったのは、それをする度胸がなかったからである。

人間、びびると足が動かないって本当なんだと分かった。

新手のカツアゲかよ。マジで。

顔面蒼白で時が止まっている俺に、騎士団長様が声をかけた。

「そこにかけて、楽にしてくれ」

いや、楽になんて出来ないです。

いっそ物理的に楽にして頂きたいくらいなんです。

と頭の中で言い返しつつ、俺は超絶びびりながら、一つ空いていた空席に着席した。

一瞬、その場に座りかけた。危なかった。

「…あの、騎士団長様」

俺は、蚊の鳴くような声で尋ねた。

「何かの間違いでしたとか、国をあげてのドッキリでしたとか、そういうオチである可能性に賭けてるんですが…。まだワンチャンありますかね?」

「悪いが、そのチャンスは皆無だ」

「…ですよねー」

尋ねた俺が馬鹿でした。真面目に答えてくれてありがとうございます。

皆真顔なのが余計プレッシャーなんですが。

「色々と思うところはあるだろうが、我々は貴殿を帝国騎士団に歓迎する。今後の活躍を期待している」

騎士団長は、ただただ淡々と、決められた台詞を読むようにそう言った。

卒業式のときも思ったが、あまり、親しみを持てないタイプの人だ。

「はい…。ありがとうございます」

とはいえ、一応激励をもらったので感謝の言葉を返しておく。

嘘でもそういうこと、言ってくれると少しは気が楽になる。

少しだけだけど。

「帝国騎士団は完全実力主義。貴殿が若過ぎるということで、この度の隊長就任には異を唱えた者も少なくない」

と、続けて言う騎士団長。

うん。あの、そういうこと言わないで欲しかった。

見ろ。あの角の席の女隊長。確か卒業式のときも来ていたが、異を唱えた代表ですみたいな顔をしている。

敵意剥き出しかよ。子供相手に。

「だが、帝国騎士官学校からの推薦書と、俺が実際に手合わせして感じた評価とを鑑みれば、貴殿には充分な素質があると判断した」

「はい…」

「故に、このような配属となった。見込んだ通りの実力が貴殿にあれば、このまま隊長として隊をまとめてもらう。貴殿には荷が重過ぎると判断されたら、降りてもらう。それだけのことだ」

…要するに、隊長で居続けたかったらそれなりの実力を示せ、と。

その実力を示す限り、俺が隊長足り得る資格となる。

…そういう訳ね。

なんともまぁ、シンプルで難しいことを、さらりと言ってのけることだ。
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