The previous night of the world revolution
一瞬、この世の者ではない誰かかと思った。

そのくらい、負のオーラが滲み出ていた。

事の発端は、三日前。

八番隊に分隊長として配属された俺は、それなりに有意義な社会生活を始めていた。

目論見通り、まずまずの役職に就くことも出来た。スパイとしてはこの上なく良いポジションだ。

そのことに満足しつつ、教えてもらった仕事を淡々とこなして、何日かたち。

そういえばルシファーはどうしているだろうかと、ふと思い出して…そしてメールをしてみた。

なんてことはない。こっちはこんな感じだけど、そっちはどう?みたいな内容だ。

だがそのメール、待てど暮らせど、返信がなかった。

忙しいから返信出来ないのだろうかと気長に待ったが、あの几帳面なルシファーがメールの返信をしないなんて、大丈夫だろうかと不安になった。

もしかして手違いでメールが届いていないのかもしれないと、再び送信したのだが…こちらも返信はなく。

何だか嫌な予感がして、俺はこの日、許可をもらって四番隊官舎に自ら赴いた。

ほんの五分ほどでも会えたら良い。元気にしてるのを確認出来たら。

そう思ってやって来たら、これだ。

ルシファーは立派な執務室の立派な机に頬をつけて、ぼけーっとしながら…片手でペンを動かしていた。

ホラーかと思った。

元々女みたいに綺麗な白い肌をしていたのに、顔はぱさつき、髪も艶を失ってくちゃくちゃ。頬は痩けてやつれ、浮浪者みたいになっていた。

誰か分からないほどだった。

しかも俺の姿を見て、訳の分からないことを言っていた。

これは本格的にやばいと感じた俺は、とにかくこいつを、まずは眠らせないといけないと思った。

生まれたての赤子も顔負けなくらい、ルシファーは普段からよく寝る。何処ででも寝る。最悪、立ったままでも寝る。

寝ることにおいてルシファーの右に出る者を、俺は知らない。

そのくらいよく寝るルシファーが、数日間まともに寝てないなんて、そんなの魚を陸に上げるのと同じくらいの拷問だ。

目は虚ろで、生命の危険すら感じた。

貧民街にもよくこういう目をした奴はいたが、そういう奴は決まって、数日後には冷たくなっていた。

俺は抵抗すらしないルシファーを担ぎ上げ、彼をベッドに投げた。本当に投げた。

寝ないと言うなら気絶させるつもりだった。

だが、もう抵抗する気力も残っていないらしかった。

言葉だけの抵抗だけして、すぐに崩れ落ちるように眠ってしまった。

一体これは…どういうことなのだろう?

俺は、ルシファーの間抜けな寝顔を見ながらそう考えた。
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