The previous night of the world revolution
気づいているのに、言わなかったのは。

それを言えば、彼女の名誉を傷つけてしまうから。

罪悪感があったから。

経緯はどうあれ、彼女と彼女の兄を不快にさせたのは事実だから。

それらも全部合わせて、引っくるめて…認めてもらいたかったから。

「…お前が何を考えてるのか、大体分かるけどな」

ルキハは厳しい口調でそう言った。

「悪いのはお前じゃないぞ」

「…」

「悪いのは、こんな子供じみた嫌がらせしか出来ない副隊長の方だ」

「…そうですかね」

「そりゃそうだろ。俺だって、俺が分隊長になったせいで先任は一般騎士に落とされたが、何の嫌がらせもされないぞ」

まぁ、子供じみたことではあるのだろうけど。

それだけ妬みが強いということなのだ。

「それに、ずっとこのままって訳にはいかんだろ」

「…そうですね」

このままだと俺は、彼女の思惑通り潰されてしまうだろう。今回の件でも既に、半分くらいは潰されていたのだから。

すんでのところでルキハが助けてくれなかったら、どうなっていたことか。

俺だって、別段望んで隊長になった訳ではない。

でも…副隊長の妬みから不当に嫌がらせされて、人生を潰される筋合いはなかった。

「…ルキハさん」

「ん?」

「シャルロッテさんを…。俺のところの副隊長を、呼んできてくれませんか」

「…言うことは分かってるな?」

「えぇ」

もう、甘えたことは言ってられない。

「なら呼んできてやる。ちょっと待ってろ」

「お願いします」

気は進まない。気は進まないけど。

でも、ルキハの言う通り…このままにしておく訳にはいかなかった。
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