The previous night of the world revolution
「…似てない、ですかね?」

「あぁ。ルシェ殿の弟君と聞いて、もう少し…堅い人間かと思っていた」

「…堅い…」

「勿論、貴殿の姉君を否定するつもりはないのだが」

「それは分かってますよ」

成程。そうなのか。

まぁ、姉さん…堅いと言えば堅いけど。と言うよりは…ちょっと冷たい、かな。俺以外の人に対しては。

悪い人ではないのだけど、誰とでも友好的に接するタイプではない。

「そういう意味では、貴殿は姉君とは似ていないな」

「よく言われますよ」

姉さんは真面目だし、しっかり者だし、隙も抜け目もない完璧な女性だが。

俺は間抜けだし、怠け者だし、隙も抜け目もありまくりの暇人だ。…童貞だし。

姉みたいに完璧な人間になりたいなーと、思わなくはないけど…。それが出来たら苦労はしない訳で。

俺は俺だと割り切っていくしかないのだ。

「姉さんみたいに…なれたら良いんですけどねぇ」

「貴殿には貴殿の長所があるのだから、そんなに気にすることはないと思うがな」

「…俺の長所って、例えばどんなところですか?」

「…純情なところか?」

「…それって長所なんですかね…」

慰めてもらったつもりが、なんだかカウンターを食らった気分だった。

だが…そんな話をしていたお陰で、気まずい車内が少し、明るくなった。
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