The previous night of the world revolution
さて、姉さんと別れた後。

おかわりのスイーツを食べまくって、ついでに未練の残るブルーベリーチーズケーキもおかわりして、ルキハをドン引きさせた俺は。

「…さすがにお腹一杯なんですよね」

「当たり前だ」

お昼を抜いてきたとはいえ、ちょっと食べ過ぎてしまったかもしれない。

「飲み物欲しいですね」

「酒はやめておけよ」

「…飲みませんよ…」

俺は、お酒がてきめんに弱いのだ。

昔。学生のとき。

故あってお酒を飲む機会があったのだが、グラスの三分の一くらい飲んだところで記憶がなくなった。翌朝ルキハに会うと、真剣な顔で、お前はもう酒を飲むな、と言われた。

なんでも俺は、泣き上戸であるらしい。

一瞬で酔っ払って、えぐえぐ泣きじゃくる俺の相手をするのに、死ぬほど骨が折れたらしく。

それ以来、ルキハによってアルコールは固く禁止されている。

「じゃあジュースでももら…」

と、そのとき。

「あっ」

どんっ、と。誰かの肩がぶつかった。

振り向くと、そこには長身の青年がいた。

「おっと…失礼」

その青年を見て、ルキハはぎょっとしていた。

…?

「申し訳ない。少し酔ってしまって」

俺にぶつかった青年は、申し訳なさそうに頭を下げた。

制服を着ていないから、多分騎士団の人間ではない。

何処かの貴族の人だろうか?見覚えがないけど。

「あ、いえ。お気になさらず」

ちょっとぶつかるくらい。俺みたいに、泣き上戸になるより遥かにましだ。

俺がそう返すと、彼は愛想の良い笑顔を浮かべて、去っていった。

…?何だろう。

今一瞬、品定めでもされるような冷たい目をしたような…。

「…ルシファー。何してる?ジュースもらいに行くんじゃないのか?」

「あ…はい。そうですね」

ルキハに急かされ、俺は我に返った。

あの青年は気になったけど、それも一瞬のことだった。

単純に、ちょっとお酒に酔ってぶつかってしまっただけだろう。

そう思うことにした。
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