The previous night of the world revolution

sideルルシー

ーーーーー…あの、馬鹿。

俺は、ルシファーにぶつかってきた男が誰かを知っていた。

…『青薔薇連合会』の幹部である、アイズレンシアだ。

あの馬鹿。何堂々と帝国騎士団の人間に接触してるんだ。

スパイの俺が言うようなことではないけれど。

『青薔薇連合会』の内、誰かが式典に参加するとは聞いていた。アイズが来るであろうことも大体予測していた。

けれども、帝国騎士団の、しかも隊長たるルシファーに直接接触するなんて。

恐らく好奇心だろう。俺が親しくしている帝国騎士団の隊長がいると聞いて、顔を見たくなったのだろう。

気持ちは分かるが、命知らずにもほどがある。

幸い、ルシファーはアイズが何者なのか、分からなかったようだが。

だが、ルシファーの観察眼の鋭さは俺もよく知るところだ。

アイズのことを意識から外す為に、俺は殊更に芝居をしなければならなかった。

あの馬鹿。今度会ったら、文句言ってやる。

だだでさえ俺はルシファーから離れられなくて、傍で見守ることが出来ないのに。

アイズのことだから、上手くやるとは思うが…。

内心はらはらしていた俺の視線の先に、とある人物が映った。

「…ん?あれ…」

「はい?」

声を出してから、しまった、と思った。

言わなければ良かった。

「…?誰か見つけました?」

「…いや…」

「何ですか?気になるじゃないですか」

…シューレンだ。

覚えているだろうか。学生時代に、寮で…ルシファーをいじめていた主犯。

何故あいつがここにいるのか。彼は、帝国騎士団の制服を着ていた。

その胸には、騎士団の分隊長であることを示すワッペンが刺繍してあった。

…あいつ、あんなことしてた癖に、分隊長なんてやってたのか。

他の隊の分隊長なんて、会ったこともないから知らなかったが。

「ルキハさん?」

「…シューレンだ、あそこ」

言いたくはなかったが、俺は渋々、シューレンの背中を指差して言った。

「あいつ、あんなことしておきながら、分隊長になんてなってるのか…。あんな馬鹿に務まるとは思えない」

あんな馬鹿を登用するなんて、帝国騎士団はどうかしてる。

きっとルシファーも気を悪くしているだろうと思って、俺は横を見た。

しかし。

「…シューレンさん?ルキハさん、あの人と仲悪いんですか?」

きょとん、とした顔で。

そんな人、初めて聞いた、とでも言うように。

ルシファーは、首を傾げてみせたのだ。
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