The previous night of the world revolution
内通者。

別名、スパイ。

「あぁ。内通者がいる可能性がある」

「えぇ…」

そりゃまぁ、帝国騎士団も大所帯だから…。そういうのは潜んでるかもしれないけど。

問題は、潜んでいるという事実ではなく。

「帝国騎士団の機密データベースにアクセス、更に改竄した形跡があると、報告が上がっている。それも…分隊長以上にしか知らされていないパスワードを使って、だ」

「…」

結構な問題のはずなのに、オルタンスは相変わらず、淡々としていた。

帝国騎士団のデータベースにって…つまりそれって、分隊長以上の人間が、スパイである可能性があるってことだよな。

かなりやばい状況だよな。

一体引き出した情報をどうしたのか。帝国騎士団の重要機密なら、さぞや高値で売れるだろう。

単なる小遣い稼ぎ目的ならまだ可愛いものだが…。もし、その情報をもっと質の悪いことに使おうとしているのなら…。

…悠長には、していられないよなぁ。

「もう目星はついてんのか?」

「現在調査中、とのことだ」

「悠長なもんだなぁ」

「だからこそ貴殿らにも情報を共有している。分隊長以上の人間で、怪しい者がいたら注意してくれ」

怪しい者…ねぇ。

隊長として、部下を疑いたい者なんているはずがないが。

「大体、ここにいる10人がシロだっていう確証もない訳だろ」

「まぁ、そうだな」

…俺は自分がシロだって、胸を張って言えるけども。

とはいえ、それを証拠付けるものは何もないのだから、意味がない。

何かの間違いであって欲しいなと、願いつつ。

「何にせよ全隊の分隊長以上の人間は、全員改めて身辺を洗うことになる。痛くもない腹を探られることもあるだろうが、これも内通者を見つける為だ。しばらく辛抱して欲しい」

「…」

内通者。

内通者…か。

俺だって痛くもない腹を探られたくはないが、こればかりは仕方なかった。
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