The previous night of the world revolution
お菓子は俺が持ってきたので、ルキハさんお茶ください、という俺の無茶ぶりに、ルキハは無言で答えてくれた。

ありがたや。

紅茶を飲みながら、美味しいお茶菓子を食べる昼下がり。

やはり人間、たまにはこういう息抜きも必要だな。

「…それにしても、良いのか?お前。忙しいんだろ?お茶会なんてやってる暇はあるのか」

「ルキハさん、良いですか?人間っていうのは息抜きも必要なんですよ」

「…お前は息抜きの割合が随分多いよな」

うん。聞こえない聞こえない。

「だって、なんか最近ぴりぴりしてるじゃないですか。痛くもない腹を探られてるものだから」

「…」

「聞きました?内通者の件。物騒ですよねぇ」

嫌疑がかかっているのは、主に分隊長以上のクラス。

ルキハも当然、知らされていることだろう。

だからこそ、彼もうんざりしているはずだ。スパイの疑惑なんてかけられて…。

…しかし。

「…あぁ、そうだな」

ルキハは、何気なしにそう答えた。

ほんの少しだけ、視線を逸らしながら。

…あ。

それで俺は、気づいてしまった。

自分の中で、何かがかちっ、と繋がるように。

…へぇ。そうなのか。

まぁ、何でも良いけどさ。別に。

「そんな訳ですから、俺最近、心労で夜八時間くらいしか寝てないんですよ」

「…寝過ぎだろう…」

えへへ、と笑って誤魔化す。いや、俺の平均睡眠時間は基本的に、10時間くらいだから。

「いやいや、ルキハさん。寝ることは大事ですよ?寝ないと大きくなれませんしね」

「随分寝てる割には、お前、結構チビだよな」

「ところでルキハさん。このケーキ美味しいですね」

「…話を逸らすのが下手だな」

あれだよ。俺の成長ホルモンはそう。大器晩成型だから。これから頑張ってくれるのだ。そうに違いない。

あと20センチくらいは頑張って欲しいな…と。

儚い希望を胸に抱いた、そのときであった。

「失礼します!四番隊隊長様はいらっしゃいますか!?」

優雅なティータイムを邪魔するかのように、血相を変えた騎士が一人、慌ただしく扉を開けて入ってきた。

これが、騒動の始まりであった。
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