The previous night of the world revolution
事件の詳細を聞いて、俺は度肝を抜かれた。
事が起きたのは、およそ四時間前。
場所は、帝都の隅っこ。に、ある私立の騎士官学校であった。
そこは、俺が通っていた騎士官学校ほどではなかったが、そこそこ優秀なことで名を知られていた。
なんとその学校で、女子生徒が一名、爆弾を抱えて体育館倉庫に立てこもっているのだそうだ。
最近の学生は、随分アグレッシブなことをするなぁ…と、俺はぼんやりと考えた。
…暢気なことを考えている場合ではない。
緊急事態だ。
「爆弾って…。何でそんなことに?」
「理由は不明だ。とにかくその生徒は、爆薬と起爆スイッチを抱えて立てこもり、かつ校舎内にも同様の爆弾を隠したと話してるらしい」
なんてことだ。
それじゃ、自爆テロじゃないか。
「仮に…もし仮に犯人が起爆スイッチを押した場合、予想される被害は?」
と、ウィルヘルミナさんが尋ねた。
「生徒が抱えている爆薬は、校舎の爆薬保管庫に保管されていたものだと推定されている。実際、保管庫にあるはずの爆薬がなくなっていているそうだ」
そもそも何故学校に爆薬の保管庫なんてものがあるのかと言うと、騎士官学校では、爆弾の解除方法を授業で習うことがカリキュラムに含まれているからである。
俺もやったが、通常爆薬は授業で用いるとき以外は厳重に管理されているから、そう簡単には盗み出せないはずなのだが…。
「となると…被害そのものはそんなに大きくなさそうだが…」
授業で使う爆薬は、それほど強力なものではない。
爆発しても、威力は爆竹を凶暴にした程度だ。仕掛けた量にもよるが、校舎が吹っ飛ぶなんてことにはなるまい。
そして授業で用いる最低限の量しか保管していないはずだから、全部仕掛けていたとしても、やはり被害はそれほど大きくないと思われる。
「とはいえ、爆弾は爆弾でしょう?」
「あぁ。抱えた状態で爆発させれば、命の危険があるな」
その生徒が錯乱して、爆薬を抱き抱えたままスイッチを押してしまえば。
良くて重傷。恐らく…命はない。
「現状、生徒、及び教員の避難は完了しているそうだ。当該生徒は現在、教員達が説得しているそうだが…」
…四時間たっても、事態を収拾出来てはいない、と。
「避難は済んでるんだな?なら…最悪、犠牲は一人で済ませられる訳だ」
腕を組んだまま、アドルファスが言った。
「アドルファス殿。一人でも守るべき帝国民の命に変わりない」
リーヴァは咎めるように顔をしかめて言い返した。
「そんなことは分かってる。数の話をしただけだ。…最悪のことは考えておくべきだろ。そいつが爆弾で何百人を殺すくらいなら、その前にそいつ一人を殺した方がましだ。違うか?」
「…」
…違わない。アドルファスの言う通りだ。
「…それでも、見捨てる訳にはいかない」
沈黙を遮るように、オルタンスが言った。
「リーヴァ殿。ウィルヘルミナ殿。…そして、ルシファー殿」
ふぁい?
「俺と一緒に、今から現場に同行してもらう」
…突然の命令に、俺は目が点になった。
事が起きたのは、およそ四時間前。
場所は、帝都の隅っこ。に、ある私立の騎士官学校であった。
そこは、俺が通っていた騎士官学校ほどではなかったが、そこそこ優秀なことで名を知られていた。
なんとその学校で、女子生徒が一名、爆弾を抱えて体育館倉庫に立てこもっているのだそうだ。
最近の学生は、随分アグレッシブなことをするなぁ…と、俺はぼんやりと考えた。
…暢気なことを考えている場合ではない。
緊急事態だ。
「爆弾って…。何でそんなことに?」
「理由は不明だ。とにかくその生徒は、爆薬と起爆スイッチを抱えて立てこもり、かつ校舎内にも同様の爆弾を隠したと話してるらしい」
なんてことだ。
それじゃ、自爆テロじゃないか。
「仮に…もし仮に犯人が起爆スイッチを押した場合、予想される被害は?」
と、ウィルヘルミナさんが尋ねた。
「生徒が抱えている爆薬は、校舎の爆薬保管庫に保管されていたものだと推定されている。実際、保管庫にあるはずの爆薬がなくなっていているそうだ」
そもそも何故学校に爆薬の保管庫なんてものがあるのかと言うと、騎士官学校では、爆弾の解除方法を授業で習うことがカリキュラムに含まれているからである。
俺もやったが、通常爆薬は授業で用いるとき以外は厳重に管理されているから、そう簡単には盗み出せないはずなのだが…。
「となると…被害そのものはそんなに大きくなさそうだが…」
授業で使う爆薬は、それほど強力なものではない。
爆発しても、威力は爆竹を凶暴にした程度だ。仕掛けた量にもよるが、校舎が吹っ飛ぶなんてことにはなるまい。
そして授業で用いる最低限の量しか保管していないはずだから、全部仕掛けていたとしても、やはり被害はそれほど大きくないと思われる。
「とはいえ、爆弾は爆弾でしょう?」
「あぁ。抱えた状態で爆発させれば、命の危険があるな」
その生徒が錯乱して、爆薬を抱き抱えたままスイッチを押してしまえば。
良くて重傷。恐らく…命はない。
「現状、生徒、及び教員の避難は完了しているそうだ。当該生徒は現在、教員達が説得しているそうだが…」
…四時間たっても、事態を収拾出来てはいない、と。
「避難は済んでるんだな?なら…最悪、犠牲は一人で済ませられる訳だ」
腕を組んだまま、アドルファスが言った。
「アドルファス殿。一人でも守るべき帝国民の命に変わりない」
リーヴァは咎めるように顔をしかめて言い返した。
「そんなことは分かってる。数の話をしただけだ。…最悪のことは考えておくべきだろ。そいつが爆弾で何百人を殺すくらいなら、その前にそいつ一人を殺した方がましだ。違うか?」
「…」
…違わない。アドルファスの言う通りだ。
「…それでも、見捨てる訳にはいかない」
沈黙を遮るように、オルタンスが言った。
「リーヴァ殿。ウィルヘルミナ殿。…そして、ルシファー殿」
ふぁい?
「俺と一緒に、今から現場に同行してもらう」
…突然の命令に、俺は目が点になった。