The previous night of the world revolution
…10分後。

俺は、オルタンス、リーヴァ、ウィルヘルミナさんと共に、現場に向かう為の軍用車両に乗り込んでいた。

何で俺が?と聞きたかったのだが、そんな時間はとてもなさそうだったので、とにかく乗り込んだ。

「…あの、オルタンス殿?」

「何か?」

もう出発してしまったから引き返す訳にもいかないけど、今なら時間もあるし、と。

俺は、聞いてみることにした。

「その…何故俺が?」

俺みたいな若輩者がそんな危なそうな現場に行って、何の役に立つのか。

右往左往してることしか出来ない気がするのだが。

「貴殿が一番、犯人と歳が近いからだ」

「…」

「それに、去年までは学生だった。学生の気持ちが一番分かるのは貴殿だ」

「…成程…」

非常に合理的な理由だった。

「でも、俺男ですよ?女子生徒なんですよね?」

「だからウィルヘルミナも連れてきた」

成程。そういうことだったか。

「リーヴァは理性的に考えることが出来るし、アドルファスのように余計なことを言って刺激することもなかろう。現場指揮にも優れている」

確かに。そう思うと、素晴らしい采配なのかもしれない。

それで駆り出される俺はたまったものではないが。

俺も余計なこと言わないようにしないと…。

「…それにしても、何で立てこもっちゃったんですかね…」

「それが分かれば苦労しない」

それすら聞き出せてないってことなんだろう?

「何か、こう…交換条件みたいなの、提示してこないんですか?」

よくあるじゃないか。人質とって立てこもる人って。身代金持って来いとか、誰かを連れてこいとか。

「今のところはそれも確認されていない」

「ひたすら黙秘ってことですか」

「そういうことだな」

どうやら、一番やりにくいタイプのようだ。

要求を出してくれる方がやりやすい。目的がはっきりしてるから。

理由も言わずに立てこもられると、こちらとしてはどうしたら良いのか分からない。

更に。

「…もう四時間もたってるんですよね」

「あぁ」

「…それで、騎士団の方に連絡が来たのは、ついさっき」

「…何が言いたい?」

「遅過ぎません?」

生徒が爆弾持って立てこもったなんて、言うまでもなく大事件だ。

すぐさま通報しなければならないような案件だ。

それなのに、四時間もの間、何をしていた?

「学校側としては、事を大きくしたくなかったんだろう」

「…」

…やはり、そういうことか。

そりゃそうだろう。だって、俺が通っていた帝国騎士官学校だって…。

…あれ?

…俺今、何を考えたんだっけ?

「とにかく、現場に着いてみないことには分からない。長丁場になるかもしれないが、なんとか怪我人を出さずに事を収めるよう、協力してくれ」

「はい」

そんな緊迫した現場で、俺に何が出来るのかは分からないが。

とにかく、自分が出来ることをやるしかなかった。
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