The previous night of the world revolution
会議後。

俺は廊下をのろのろ歩きながら、考えていた。

…内通者であることが発覚すれば、ただでは済まないだろう。

それは帝国騎士団と『青薔薇連合会』の均衡を崩すことであり、両者の溝を一層深める行為だ。

良くて、散々拷問されて、『青薔薇連合会』との取引に利用されるだけ。

悪ければ、散々拷問されて、情報を吐かされて…それから処刑、だ。

恐らくは後者になるだろう。

どちらにしても半殺しの目には遭わされる。

「…」

だが、俺は…そんなことは、嫌だった。

「…大丈夫か?ルシファー殿」

隊長会議後、ぼんやりしていた俺に、ウィルヘルミナさんが話し掛けた。

「…はい?」

「疲れているようだが…」

「あ、いえ。別に疲れてはいませんよ。ただ…考え事をしていただけで」

「考え事?」

「えぇ。…内通者、の件で」

それを言うと、ウィルヘルミナさんも顔を曇らせた。

自分自身も痛くもない腹を探られている上に、自分の部下も疑われているのだから、良い気分であるはずがない。

それは、俺も同じだ。

「確かに…気の重い案件だな」

「どうなるんでしょうね」

「そう遠くないうちに、犯人は見つかると思うがな。フレイソナ殿もあの言い方だと、およそ検討がついているようだし…」

「…そうですね」

「…そう気を落とされるな。もし、内通者が貴殿の部下だったとしても…それは貴殿の責任ではないのだから」

ウィルヘルミナさんは、俺が自分の部下に内通者の嫌疑がかかっていることを憂いているのだと思っていた。

だが、そうじゃない。俺が憂いているのは、そんなことではなかった。

「…誰なんでしょうね、内通者」

「…さぁ。私には分からないが…どちらにしても、発覚すればただでは済むまい」

うん。

俺も、そう思うよ。
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