The previous night of the world revolution

sideルシファー

ーーーーー…ルキハは、俺を撃たなかった。

今撃ったところで、人が集まるからどうせ全部ばれるのだけど。

それを差し引いても、彼には撃てない。そんなことは俺にも分かっていた。

だって、立場を逆にしたところで。

俺には、絶対撃てないのだから。

だから彼に殺されることはないだろうと思っていた。まぁ、もし万が一撃たれたとしても、彼に殺されるなら本望だという言葉に嘘はなかった。

それが正しいことだと分かっていても、感情には逆らえない。

「…糞」

毒づきながらも、ルキハは拳銃を下ろさざるを得なかった。

「…あなたはそうすると思ってましたよ」

「…もう良い。俺はスパイには向いてないんだ」

「いつからスパイですか?最初からですか」

「…あぁ」

じゃあ、帝国騎士官学校に転校してきたときからそうなんだ。

「だからお前と付き合ったのも、お前がウィスタリアの人間だからだ」

「へぇ?」

「利用する為に親しくした。それだけだ」

「…それであなたは、そんなこと言って俺が信じるとでも?」

「…ちっ」

最初は確かにスパイ活動の一環だったのだろう。でもそれはいつの間にか、口実になっていた。

本人の言う通り、彼はスパイには向いてない。

絶対に、心を通わせてはいけなかったのに。

俺を殺せないほどに、俺達は本物の絆を築いてしまった。

「…安心しました」

「…は?」

「俺が好きになったのは本当のあなたで、あなたが好きになってくれたのも、本当の俺なんですね」

「…」

ルキハは、悔しそうに唇を噛み締めた。

そうか。うん。良かった。

安心した。

じゃあ、もう離れ離れになっても大丈夫だ。

「…好きにしろ。抵抗はしない」

ルキハは全てを諦めたようにそう言った。

俺を殺せないなら、もうそうするしかないな。

抵抗しないなら有り難い。

俺は彼を今すぐ引っ張っていって、こいつが内通者ですと告げれば良い。

フレイソナも余計な調査をする必要はないし、帝国騎士団の隊長としてこの上ない貢献をすることが出来る。

素晴らしい。これで万事解決だ。












…なんて。





「…俺がそんなこと、すると思いましたか?」

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