The previous night of the world revolution
「一体、何がどうなってるの?」

連絡をするなり、今何処迎えに行く、と車を走らせてきた、アイズことアイズレンシアは。

険しい顔つきで、まず第一声。

「どうやって逃げてきたの?」

「…端的に言うと、ルシファーが助けてくれた」

「ルシファーと言うと…君の友人だったね。式典で一緒にいた」

あぁ、あのときお前、わざわざルシファーの顔を見に来てたね。

どんだけ馬鹿かと思ったよ。

「彼、ウィスタリアの人間でしょ?おまけに帝国騎士団の隊長だ。何で君を逃がす?」

「…あいつも馬鹿なんだよ…」

馬鹿だから、後先省みずに感情に流される。

「…まさか情に絆されて?」

「…そのまさかだ」

「…」

さすがのアイズもこれには無言であった。

信じられない、という顔だ。俺だってにわかには信じがたいが、でもこれが真実なのだ。

「何かの罠…ってことじゃないだろうね」

「分からない。でも、どちらにしてもばれるのは時間の問題だったんだ。袋のネズミをわざわざ罠にかける必要があるか?」

「…」

「単純に絆されたんだと思う。あいつは…そういう奴だ」

何だかんだで、もう三年近くあいつと付き合っていた。

何もかも分かる訳じゃないが、でも彼のことは、俺はよく分かっている。

「…成程。帝国騎士団に借りが出来てしまったね」

「あいつは、返して欲しいなんて思っちゃいないだろうけどな…」

そして、きっともう二度と会うこともないだろう。

そう思うと、言い様のない虚無感に襲われた。

「何にせよ、帰ったら覚悟しておきなよ。アシュトーリアさん、随分君のこと心配してたからね」

「…そうか」

アシュトーリアさん。彼女に会うのも、久し振りだ。

責められることはないと思うが、何と言われるか…。
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