The previous night of the world revolution

sideルシファー

ーーーーーー…後悔なんて、何処にもなかった。

ルルシーを助ける為に、人生を壊された人間がいることすら、もう頭にはなかった。

俺の中にあるのは、ただ親友を助けることが出来たという達成感のみ。

それだけだった。

彼は…ルルシーは今頃、どうしているだろうか。

無事に戻れていると良いが…。




いつもの、憂鬱な隊長会議の後。

ウィルヘルミナさんが、俺に声をかけてきた。

「…ルシファー殿。ティグラーダ卿は…気の毒だったな」

「…あぁ、そうですね」

ウィルヘルミナさんが一瞬、誰のことを言っているのか分からなかった。

ルルシーの偽の名前だ。

「聞けば、身体を悪くしたとか…」

「えぇ…。実家でゆっくり療養するから、心配するなと…そう言われました」

勿論、そんなことは言われてない。

彼が元気なことは俺が一番よく知ってる。

けれど、俺はさも病気の友人を案じているかのような、沈鬱な表情をしてみせた。

自分の演技が上手いなどとは思ったこともないが、少しも疑いを抱いていないウィルヘルミナさんを見るに、あながち下手ではなさそうだ。

「ようやく内通者が判明して、平穏を取り戻したというのに…。…しかし、十番隊の分隊長だったか。シュレーゲル家の長男…。馬鹿なことをしたものだ。金に困っていたとはいえ、マフィアに雇われるなど…恥を晒すにも程がある」

心底軽蔑しているのだろう。ウィルヘルミナさんは、吐き捨てるようにそう言った。

だから俺は、笑顔で。

笑顔で、こう返した。

「えぇ。全くですね」















…自分と、自分の大切な者さえ守れれば、その他なんて地獄に堕ちても構わない。

人間って、そういう生き物だろう?



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