The previous night of the world revolution
「…大丈夫か?」

空港では、忙しい合間を縫って、姉さんが迎えに来てくれていた。

本当ならわーいと飛び付きたいくらいなのに、とてもそんなことが出来る状態ではない。

オルタンスに肩を貸してもらって、ようやくふらふら歩けている始末。

「一体何があったんだ…」

姉さんも、俺を見るなりこの反応。

まさか弟がこんな満身創痍で帰ってくるとは思っていなかったらしい。

俺だって、出来ることなら元気に帰ってきたかったよ。

「彼がこんなに飛行機酔いが激しいとは思わなかった。弟を無事に返してやれなくて済まなかった。殴ってくれて構わない」

律儀なオルタンスは、そんなことを言いながら俺を姉さんに引き渡した。

「いえ…別に殴りはしませんが、飛行機酔いですか…」

「行きも酷かったが帰りは更に酷かったな」

「そうですか。お手数をおかけして…。…おい、大丈夫かルシファー」

「…魂を…魂をアシスファルトに忘れてきました…」

「ちゃんと持って帰ってきてるから安心しろ」

姉さんの顔を見ると、多少元気が出た。

あぁ、俺生きてる…。ちゃんと陸にいる。

人間は地を這うべき生き物だ。それを強く実感した。

そもそも何故、鉄の塊に乗っかって空を飛べるなどという発想を思い付いたのか。

「ほら、帰るぞ。帰って休め」

「あうぅ…。あ、そうだ…姉さん、俺お土産買ってきましたからね…」

「後でな、後で」

帰りの車中、俺は姉さんの肩にもたれかかって、少し眠った。

帰ってくるべき場所に帰ってきた、そんな気がした。
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